専用サーバー:Pterodactylのインストール
はじめに
Pterodactylパネルは、ゲームサーバーを簡単に管理・ホスティングできるオープンソースのコントロールパネルです。管理者が複数のゲームサーバーを一元的に設定・管理できるユーザーインターフェースを提供します。
このガイドでは、専用サーバーに自分のPterodactylインスタンスをセットアップするための手順を紹介します。
準備
Pterodactylパネルをインストールするには、Linuxが動作する専用サーバーが必要です。以下の表にある対応OSのいずれかを使用してください。
OS | 対応バージョン |
---|---|
Ubuntu | 20.04, 22.04 |
CentOS | 7, 8 |
Debian | 11, 12 |
依存関係
Pterodactylを正常にインストール・実行するには、いくつかの依存関係が必要です。また、PHPの依存関係マネージャーであるComposerも利用します。
依存関係リスト
このガイドで必要な依存関係のリストです。次のセクションでインストール方法を解説します。
- PHP 8.1(拡張機能:cli, openssl, gd, mysql, PDO, mbstring, tokenizer, bcmath, xmlまたはdom, curl, zip, fpm)
- MariaDB
- Webサーバー - 本ガイドではNginxを使用します。
- curl
- tar
- unzip
- git
- composer v2
依存関係のインストール
まず、OSにデフォルトでないパッケージを追加できるように、以下のコマンドを実行します。
apt -y install software-properties-common curl apt-transport-https ca-certificates gnupg
次に、PHP、Redis、MariaDB(MySQL)の追加リポジトリをインストールします。
LC_ALL=C.UTF-8 add-apt-repository -y ppa:ondrej/php
一時データ保存に必要なRedisもインストールします。
curl -fsSL https://packages.redis.io/gpg | sudo gpg --dearmor -o /usr/share/keyrings/redis-archive-keyring.gpg
echo "deb [signed-by=/usr/share/keyrings/redis-archive-keyring.gpg] https://packages.redis.io/deb $(lsb_release -cs) main" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/redis.list
Webサーバーには信頼性が高くオープンソースのNginxを選びました。ApacheやCaddyなど他のWebサーバーも使えますが、本ガイドには適していません。
sudo apt install nginx # Nginxのインストール
sudo ufw allow 'Nginx Full' # ファイアウォールの調整
http://[your_serverip]/
にアクセスして、Nginxが正常に動作しているか確認しましょう。デフォルトのウェルカムページが表示されるはずです。
続いて、MySQLデータベースとして使うMariaDBをインストールします。
curl -sS https://downloads.mariadb.com/MariaDB/mariadb_repo_setup | sudo bash
最後にリポジトリを更新し、残りの依存関係をインストールします。
apt update
apt -y install php8.1 php8.1-{common,cli,gd,mysql,mbstring,bcmath,xml,fpm,curl,zip} mariadb-server nginx tar unzip git redis-server
これで必要な依存関係がすべてインストールされました。次はComposerのインストールに進みましょう。
Composerのインストール
主要な依存関係が揃ったので、PHPの依存関係マネージャーであるComposerをインストールします。これにより、Pterodactylサービス全体を簡単にダウンロード・インストールできます。
以下のコマンドを実行してください。
curl -sS https://getcomposer.org/installer | sudo php -- --install-dir=/usr/local/bin --filename=composer
パネルのダウンロード
すべての準備が整ったので、Pterodactylパネルをインストールします。
まず、パネルを保存するフォルダを作成します。
mkdir /var/www/pterodactyl
cd /var/www/pterodactyl
次に、公式Pterodactyl GitHubリポジトリから必要なファイルをクローンします。
curl -Lo panel.tar.gz https://github.com/pterodactyl/panel/releases/latest/download/panel.tar.gz
tar -xzvf panel.tar.gz
chmod -R 755 storage/* bootstrap/cache/
クローンが完了すると、パネルのダウンロードが成功しています。次のセクションでは、パネルが正しくインストールされ、正常に動作するように各種設定を行います。
インストール
インストールの最初のステップは、Pterodactylパネルのデータを保存するMySQLデータベースのセットアップです。すでに適切なユーザーを持つMySQLデータベースがある場合は、次のサブセクションをスキップして進めてください。
データベースのセットアップ
MySQLにログインします。新規インスタンスの場合は以下のコマンドでログイン可能です。
mysql -u root -p
既存のMySQLインスタンスがある場合は、-u
にユーザー名、-p
でパスワード入力を行います。
ログイン後、Pterodactyl用の新しいユーザーを作成します。[your_password]
は任意のパスワードに置き換えてください。
CREATE USER 'pterodactyl'@'127.0.0.1' IDENTIFIED BY '[your_password]';
ユーザーができたら、Pterodactyl用のデータベースを作成し、新ユーザーに権限を付与します。
CREATE DATABASE panel;
GRANT ALL PRIVILEGES ON panel.* TO 'pterodactyl'@'127.0.0.1' WITH GRANT OPTION;
これでMySQLユーザーとデータベースのセットアップが完了しました。exit
コマンドでMySQL管理画面を終了してください。
セットアップの続き
次に、環境設定ファイルのコピーを行います。
cp .env.example .env
続いて、Composerを使って必要なパッケージを自動インストールします。
composer install --no-dev --optimize-autoloader
アプリケーション用の暗号化キーを生成します。
php artisan key:generate --force
環境設定
Pterodactylインスタンスの設定を行います。以下のコマンドを実行すると、セッション、メール、キャッシュなど幅広い設定を対話形式で行えます。
php artisan p:environment:setup # 最初のコマンド
php artisan p:environment:database # 次のコマンド
データベースのセットアップ
パネル稼働に必要な基本データをセットアップします。先ほど作成したデータベースを使います。
処理には数分かかる場合があります。途中で終了しないように注意してください。気長にお待ちください :)
php artisan migrate --seed --force
管理者ユーザーの作成
データベース準備ができたら、最初の管理者ユーザーを作成してパネルにログインできるようにします。
php artisan p:user:make
パーミッションの設定
パネルのファイルに対して、常に読み書き可能なように適切なパーミッションを設定します。
chown -R www-data:www-data /var/www/pterodactyl/*
これで、以下のURLにアクセスすればPterodactylパネルに入れます。your_ipaddress
はサーバーのIPに置き換えてください。
http://[your_ipaddress]/
キュー・ワーカーの設定
最後に、定期的に動作するcronジョブと、バックグラウンドで多くのタスクを処理するキュー・ワーカーを設定します。
まず、sudo crontab -e
でcrontabを開き、以下の行を追加して毎分Pterodactylのスケジュールを実行します。
* * * * * php /var/www/pterodactyl/artisan schedule:run >> /dev/null 2>&1
次に、systemd
を使ってキュー・ワーカーを常駐させます。
以下のコマンドでnanoエディタを開きます。
nano /etc/systemd/system/pteroq.service
以下の内容をコピー&ペーストしてください。
# Pterodactyl Queue Worker File
# ----------------------------------
[Unit]
Description=Pterodactyl Queue Worker
After=redis-server.service
[Service]
# 一部のシステムではユーザーやグループ名が異なる場合があります。
# apacheやnginxユーザーを使う場合もあります。
User=www-data
Group=www-data
Restart=always
ExecStart=/usr/bin/php /var/www/pterodactyl/artisan queue:work --queue=high,standard,low --sleep=3 --tries=3
StartLimitInterval=180
StartLimitBurst=30
RestartSec=5s
[Install]
WantedBy=multi-user.target
CentOSを使っている場合は、redis-server.service
をredis.service
に置き換えてください。
保存は CTRL + X
、続いて Y
を押して確定します。
最後に、redisサービスと作成したサービスを起動時に有効化します。
sudo systemctl enable --now redis-server
sudo systemctl enable --now pteroq.service
これでサーバーにPterodactylのインストールが完了しました。以下のURLでパネルにアクセスできます。[your_serverip]
は自分のサーバーIPに置き換えてください。
http://[your_serverip]
オプション:Webサーバーの設定
追加機能として、Webサーバーの設定を行うこともできます。本ガイドではNginxを使っているので、その設定方法を紹介します。
Webサーバーを設定するメリットは、パネルを自分のドメインで運用できたり、SSL証明書を設定して安全にアクセスできるようになることです。
ドメインのDNSレコード設定
サーバーをドメインでアクセス可能にするには、そのドメインに対してA
タイプのDNSレコードを設定する必要があります。これは利用しているドメイン管理サービスの「DNSパネル」などから設定可能です。レコードの内容は、あなたのサーバーのIPアドレスを指定してください。
デフォルト設定の削除
まずはNginxのデフォルト設定を削除します。
rm /etc/nginx/sites-enabled/default
ここからは、SSLを使うかどうかで設定内容が少し変わるので、どちらかを選んでください。
- Nginx With SSL
- Nginx Without SSL
Certbotのセットアップ
SSL証明書を自動管理・更新するために、オープンソースのCertbotを使います。
まずはCertbotとNginx用のpython3パッケージをインストールします。
sudo apt update
sudo apt install -y certbot
sudo apt install -y python3-certbot-nginx
次に、証明書発行のための検証を行います。ここではHTTPチャレンジより安全なDNSチャレンジを使います。
使いたいドメインに対してTXT
タイプのDNSレコードを作成してください。これもドメイン管理サービスのDNSパネルから設定します。
以下のコマンドを実行すると、DNSレコードに設定すべき値が表示されます。[your_domain]
は使いたいドメインに置き換えてください。
certbot -d [your_domain] --manual --preferred-challenges dns certonly
DNSレコードを設定したら、証明書の自動更新用にcronジョブを設定します。sudo crontab -e
でcrontabを開き、以下の行を追加してください。毎日23時に証明書を更新し、更新後にNginxを再起動します。
0 23 * * * certbot renew --quiet --deploy-hook "systemctl restart nginx"
設定ファイルの作成
SSL証明書が準備できたら、Nginxの設定ファイルを作成します。
以下のコマンドでnanoエディタを開きます。
nano /etc/nginx/sites-enabled/pterodactyl.conf
以下の内容をコピーして貼り付けてください。[your_domain]
は先ほどDNS設定したドメインに置き換えます。
SSL証明書が設定されていないと、Webサーバーが正常に起動しません。必ず証明書を用意してください。
server_tokens off;
server {
listen 80;
server_name [your_domain];
return 301 https://$server_name$request_uri;
}
server {
listen 443 ssl http2;
server_name [your_domain];
root /var/www/pterodactyl/public;
index index.php;
access_log /var/log/nginx/pterodactyl.app-access.log;
error_log /var/log/nginx/pterodactyl.app-error.log error;
client_max_body_size 100m;
client_body_timeout 120s;
sendfile off;
ssl_certificate /etc/letsencrypt/live/[your_domain]/fullchain.pem;
ssl_certificate_key /etc/letsencrypt/live/[your_domain]/privkey.pem;
ssl_session_cache shared:SSL:10m;
ssl_protocols TLSv1.2 TLSv1.3;
ssl_ciphers "ECDHE-ECDSA-AES128-GCM-SHA256:ECDHE-RSA-AES128-GCM-SHA256:ECDHE-ECDSA-AES256-GCM-SHA384:ECDHE-RSA-AES256-GCM-SHA384:ECDHE-ECDSA-CHACHA20-POLY1305:ECDHE-RSA-CHACHA20-POLY1305:DHE-RSA-AES128-GCM-SHA256:DHE-RSA-AES256-GCM-SHA384";
ssl_prefer_server_ciphers on;
add_header X-Content-Type-Options nosniff;
add_header X-XSS-Protection "1; mode=block";
add_header X-Robots-Tag none;
add_header Content-Security-Policy "frame-ancestors 'self'";
add_header X-Frame-Options DENY;
add_header Referrer-Policy same-origin;
location / {
try_files $uri $uri/ /index.php?$query_string;
}
location ~ \.php$ {
fastcgi_split_path_info ^(.+\.php)(/.+)$;
fastcgi_pass unix:/run/php/php8.1-fpm.sock;
fastcgi_index index.php;
include fastcgi_params;
fastcgi_param PHP_VALUE "upload_max_filesize = 100M \n post_max_size=100M";
fastcgi_param SCRIPT_FILENAME $document_root$fastcgi_script_name;
fastcgi_param HTTP_PROXY "";
fastcgi_intercept_errors off;
fastcgi_buffer_size 16k;
fastcgi_buffers 4 16k;
fastcgi_connect_timeout 300;
fastcgi_send_timeout 300;
fastcgi_read_timeout 300;
include /etc/nginx/fastcgi_params;
}
location ~ /\.ht {
deny all;
}
}
設定ファイルの作成
以下のコマンドでnanoエディタを開きます。
nano /etc/nginx/sites-enabled/pterodactyl.conf
以下の内容をコピーして貼り付けてください。[your_domain]
はDNSレコードを設定したドメインに置き換えます。
SSL証明書が設定されていないと、Webサーバーが正常に起動しません。必ず証明書を用意してください。
server {
listen 80;
server_name [your_domain];
root /var/www/pterodactyl/public;
index index.html index.htm index.php;
charset utf-8;
location / {
try_files $uri $uri/ /index.php?$query_string;
}
location = /favicon.ico { access_log off; log_not_found off; }
location = /robots.txt { access_log off; log_not_found off; }
access_log off;
error_log /var/log/nginx/pterodactyl.app-error.log error;
client_max_body_size 100m;
client_body_timeout 120s;
sendfile off;
location ~ \.php$ {
fastcgi_split_path_info ^(.+\.php)(/.+)$;
fastcgi_pass unix:/run/php/php8.1-fpm.sock;
fastcgi_index index.php;
include fastcgi_params;
fastcgi_param PHP_VALUE "upload_max_filesize = 100M \n post_max_size=100M";
fastcgi_param SCRIPT_FILENAME $document_root$fastcgi_script_name;
fastcgi_param HTTP_PROXY "";
fastcgi_intercept_errors off;
fastcgi_buffer_size 16k;
fastcgi_buffers 4 16k;
fastcgi_connect_timeout 300;
fastcgi_send_timeout 300;
fastcgi_read_timeout 300;
}
location ~ /\.ht {
deny all;
}
}
設定の適用
設定ファイルを作成したら、以下のコマンドで有効化し、Nginxを再起動します。
sudo ln -s /etc/nginx/sites-available/pterodactyl.conf /etc/nginx/sites-enabled/pterodactyl.conf # CentOSでは不要
sudo systemctl restart nginx # Nginxの再起動
これで設定は完了です。設定したドメインでPterodactylパネルにアクセスできるはずです。
ドメインでのアクセスとSSL証明書の設定が無事に完了しました。